日曜の昼ごはん

日曜の昼ごはんの定番といえばうちではパスタ、特にトマトソースだった。にんにくの食欲をそそる芳ばしい香りが家中にやんわりと広がると、わたしは二階のリビングから駆け降りてキッチンへ向かう。冬はおでんを炊く大きな鍋でぽこぽこと音を立てながらパスタが茹っている。隣のコンロにはフライパンにひたひたの真っ赤なソース。トマトと玉ねぎとオリーブオイル、そしてハーブの香りがキッチンに満ちていく。夏はカペリーニを氷水でキンキンに冷やして、シャーベット状に凍らせたトマトソースとジャリジャリと混ぜる。最後に家族三人分をドバッと豪快に白のオーバル型の器に盛り、庭で採れたバジルの葉を散らすのである。父は食道がんを患って以降(もちろん今は健康体だが)食がすっかり細くなってしまい、とりわけ炭水化物の類は食べにくいようだったのでその分わたしと母がよく食べた。パスタの取り皿は決まってフチに淡い虹のような模様が入ったもので、わたしはその皿が好きだった。

母はなかなか可愛い人で、ソースの味がうまく決まらなかったときはわたしと父が食べる前に、味が薄めなら「今日は優しいお味だよ」、濃かったら「今日はパンチがある!」などと言っていた。わたしはそんな予防線を張るような言い方をする母が可愛くて、微笑ましかった。

そんな穏やかな昼も、わたしが日曜に塾に篭るようになるとめっきり減ってしまった。

高校を卒業してからは毎日ジムに通い、食事制限をしてダイエットに励んでいたので当然パスタなどそれとは正反対にあるものを口にすることはなく、穏やかな日曜の昼の定番は影を潜めていた。

 

この間、帰省した日の日曜に随分久しぶりに昼にパスタを作った。母のキッチンでの動きはわたしの記憶と違わなかった。わたしの仕事は皿とフォーク、飲み物を用意し父に二階のテーブルを片付けるように言うこと、それも何も変わらなかった。